人気ブログランキング | 話題のタグを見る
眠ってばかりいるのがつまらなくて、ずっと側にくっついてマンガを読んだり、メールをしたりしていた。
重い?ってきいたら、ううん、ちょうど良い、って半分眠りながら答えた。

カーテン越しの昼の光に満たされた部屋で、白い天井をみていた。背中に、体温を感じながら。幸せって、こういうものなのかもしれないなあ、と思っていた。
眠っている彼の身体はいつも、発熱しているかのようにホカホカで、冷え性のあたしの冷たい足先を押しつけるとあったかくて、じきに暑くなってしまった。

絡めた脚が暑くて重くて。
Tシャツはタバコとお酒のお店の匂いがした。

寝ぼけながらの、他愛ない会話。

眠る彼をじっくりと観察した。まばらな髭、荒れた首筋、ほくろ。長い手足。


勝手に思い描いていた予定が実現できないことが、さらりと発覚して。
帰り際、あたしは不機嫌で、悲しくて、さみしくて、何か喋ると泣いてしまいそうだったから、ベッドからも出ないで見送りもせず、「じゃね」って声にも、何も答えなかった。

幸せと絶望は、いつだって時間差でセットでやって来る。


ズボン出して、っていわれて、なくしちゃった、と答えた。後ろめたい気持ちで、たまらず、ごめんなさいって謝った。
あそう、って、なんとも言えない顔をして、でもなにも言わなかった。
本当は捨てちゃったんだよ。
何か気づいたかな。
彼がしてきたことを考えたら、こんなこと当然って思うけど、その瞬間とても酷いことをしてしまったような気がした。


この記憶を、また、何度なぞることになるんだろう。
安息はつかの間で、どんなに笑いあったって、くっついて眠ったって、そんなの本当じゃない。


何もかもが違いすぎて、彼と分かち合えるものはひとつもない。そもそも、一緒にいるのが間違いなくらい、全く別々のジャンルの世界を生きている。動物だったらゾウとカメレオンぐらい違う種族だね。
本来、彼みたいなひとって全然興味ない。でも彼は、彼みたいなひと、じゃなくて、彼だから。


もうどう足掻いたってだめだと知っている。どの観点から考えても、無理。
この、好きだという感情も錯覚だ。
わかってる。
でも、錯覚が、消えてくれない。

あたしは、ただ、大切にしたりされたり、したいだけなのにな。
そんな単純なことが叶わない。
こんなに頑張ってるのに、なんで。
高望みしてる?
なんで。


その日、ひとりで眠って夢をみた。
大きな古い劇場に、いろんなお店が入った複合施設。あたしと彼はその中の別々のお店でバイトしている。出勤前に、入り口で、じゃあね、って別れた。
知らないひとばかりのバイト先で、ドラッグストアの売り子をした。理不尽に怒られて、でも我慢した。
やっと仕事が終わって、彼に会いたい!ってたまらなくて、走って彼を探した。でも会えなくて、ああ彼はあたしを待っててくれなかったんだな、って思った。あたしはいつのまにか風みたいな、身体のない存在になっていて、悲しい気持ちで、人混みをすごいスピードでさまよい続けた。

っていう夢。
夢まで悲しい。

錯覚でも好きだよ。
相性最悪でも、好き。

あんな不機嫌なあたしが、あれが最後になっちゃったら嫌だな。
by mei_and_sora | 2010-12-25 00:11 | 日々
<< 朝と夜しか知らない 幸福論 >>